3番目の目で見た・オオハマのおじ~どうしても伝えたい話4 |
2007年09月26日 |
カマルー、カマルーウンナー」
えんがわの方で女の人の声がした。
「ウータイ、ナマチューグトゥ マッチョーチ キミソーレー」
カマルさんは、あわててえんがわに向かった。立っていたのは幼い頃から世話になっている、
おばのチルーであった。
「ウバマーヤ、ウヌフェーサカラ ヌーンチ ワッターヤーカイ メンシェービタンナ
ワンネー ナマ ウンジュヌ ヤーンカイ ティガネーシーガ イチュル トゥクマル ヤタンロー」
「あのね、カマル・・・私この間からあんたに話したいことがあったんだけど、
忙しくてなかなか時間がとれなくてね。」
「あ・・・でも仕事のほうは・・・」
ふうーっと一息ついておばのチルーが言った。
「カマルー、あんた最近体調がよくないようだから、今日はもう仕事の方は休みなさい・・・」
「エッ・・・あ・・・でも・・・」ドキッとしたカマルさんでした。
「カマルー私はね、小さい時からあんたのこと我が子と思ってずうぅと見てきたのよ、わかるね?」
「ハイ・・・」叱られる子供のようにカマルさんはおばの前にひざまづいた。
「あんた、私が何も言わないから、何も知らないと思っているの?」
「・・・・・・・・」
どこに出しても恥ずかしくないように女の務めも教えてやって、
いつかね立派な男性のもとに嫁がせようと、
そうやってあんたを育ててきたの…」
カマルさんはおばのチルーの前で両手をつき頭を下げた。
「お世話になってることは、わかっております。
おばさんには本当に心から感謝しています。」
カマルさんがそう言ったとたんに、おばの目がつり上がり、
ものすごい形相になった。
バンッ!!!とすごい音をたてておばのチルーはこしかけていたえんがわの板をたたいた。
カマルさんはおどろいて身体がビクッとした……
「いいかげんにしなさいよ!!私はね、あんたから感謝してもらいたくて、早くからここに来てるんじゃないのよ!!
私はね、腹が立って腹が立ってしょうがないんだから、あんたは私のこと何だと思ってんの?
私はあんたのこと我が子だと思ってきたのに、何であんたは私に何も話してくれないの?
私はあんたとは他人なの?家族じゃなかったの?」
「ウバマー?……」
その言葉を聞いたカマルさんは、ハッとして、おそるおそる顔を上げ、おばを見た。
怒ったその目にいっぱい涙がにじんでいた。
「カマルー…あんたがね、流れついたあのワケのわからない異国の男と恋仲なのは知っていたよ、
最初は私も心の中ではあまり良く思っていなかったけれど、
私はね、こんな風に言ったらなんだけど…
毛が金色だろうが異国の人間だろうが、あんた達二人が本当に心を結び合わせているのなら、
それはそれで認めてあげようって、それであんたが本当に幸せならって、そう思っていたんだけど、
私はね、知り合いから耳にしたんだよ、あの異国の男、あんたをおいて国に帰るんじゃないかって…
そのことだけじゃない、それにあんた、あの男の子供を身ごもっているでしょう……」
「おばさん…知って……」
「知ってるも何も、私だって子をもつ親だよ!!あんた見てたらおめでたしてることぐらい、すぐにわかるわよ!まったくもう…」
カマルさんは、鼻をすすりながら袂のすそで涙をぬぐうおばのチルーを見て、反省の念に陥った。カマルさんも、いつかは話さなくてはと思いつつも、異国の人と夫婦になることで、世話になった
おばにいらぬ心配や迷惑を
かけ、恩をあだにして返すのではと恐れ、思いを告げることが出来ずに、ずっと思い悩んでいたことだった……
とても温かい涙だった…
この時、カマルは初めて「母親」というものを理解した。
これまで世話になってはいた
ものの、やはり実の子ではない
自分にコンプレックスをもっていたのは確かだった。
だから、なるべく迷惑のかからないよう、それだけを自分の肝に命じ、これまで過ごしてきた、
なのにおばのチルーはちがっていた。
ずっと自分のことを見ていてくれた、こんな涙するほど心配してくれていたのに…
カマルさんは、これまでのおばに対する自分の思いを恥じた…
「ごめんなさ……おばさん…ほんとうに、ごめんなさい……
自分勝手なことばかりして…話そうと…何度もおばさんに打ち明けようと、思ったの…」
「でも…」おさえていた言葉が出るように、涙がポロポロと落ちてきた。
おばのチルーは、「もう、この子は…」と言いながら、カマルさんの頭をぐいっと自分の胸に
おしつけ抱きしめた。
「…アンマー……」カマルさんはこの時、生まれて初めて母親の温もりを知りました。
本当の親子じゃないからと、つまらない意地をはっていた自分の心の中にあった
暗い影がなくなっていくのを確かに感じとり、そしてこの時、カマルさんとおばのチルーさんは、本当の親子の絆を結んだ瞬間でもありました……
つづき
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