3番目の目で見た・オオハマのおじ~どうしても伝えたい話3 |
2007年09月25日 |
一緒にいられるわずかな時を
大切にするかのように、
仲むつまじく過ごしていましたが、
日がたつにつれ別れの時間が近づいてくる悲しみを感じずにはいられませんでした。
時折、トーマスさんは知念の村に出掛け、船の修理がどれくらい進んでいるのかを確認しました。
見る見る修復作業が進み、完成していくのを見ながら複雑な思いでした。
「帰るのをやめて、そのままこの島に…カマルのそばにずっといっしょにいようか……」
そんな思いもあって、トーマスさんは母国の両親あてに手紙を書いていました。
手紙といっても、カマルさんが織る布に染料を使って書いたものでした・・・
「船員に頼んで、手紙を国の両親に渡してくれとお願いをして、自分はこの島に残ろう。
手紙を読めば父や母も、私の気持ちを理解してくれるはず……」
けれども、トーマスさんの心の中には、自分の生まれ故郷に帰りたい、
父や母のもとで暮らしたいという思いも捨てきれず、ずっと気持ちはゆらいでいました。
もうすぐで完成となる船を見つめ、トーマスさんは決心しました。
「私は、父親になるんだ、生まれてくる子供の為にも、
私も父のように、我が子のそばにいて立派な大人になるよう見守ってあげよう……」
トーマスさんは、意を決して持ってきた手紙をにぎりしめ、浜に下りました。
木陰で休みをとっている船員達のそばに行き、顔見知りになった船員の一人に声をかけ、
話をしました。
「こんにちは…船もそろそろ完成ですね。」
「やあ、トーマスさんか、ああ船はもうほとんど仕上がっているんだけど…」
少し表情をくもらせた船員に、トーマスさんはたずねました。
「どうかしましたか?…何かあったのですか?」
その船員は、困った顔をして頭をかきながら、話してくれました。
「いや、3日ぐらい前に、この島の国王の使いだか、お役人だか、
何だかは知らねぇが、20人ぐらい押しかけてきてな、
おれ達を海ぞくじゃねぇかってなんくせつけやがって、いっくら説明しても言葉が通じねぇんだよ…
しまいにゃ刃物もち出しておれらをおどしやがった。
おれ達もこりゃ一戦交えるのかと思って覚悟してたんだが、船長から「待て!!」
と言われてな、そしたらよ、おれ達の船長とかじをとるやつ2人を縄でふんじばって、連れて行きやがった…
「心配するな、すぐ戻る…」って船長は言ったんだが、3日もたってんのに帰ってこねぇんだよ…
もしかして、あの変な連中に殺されたんじゃねぇか…って、もし戻ってこなかったら、
おれ達ゃどうすればいいのか・・・まったく一体全体どーなっちまってんだよここはー!!!」
怒りをはき出すようにその船員は、空に向かってどなり声を上げたのでした。
その様子を見てトーマスさんは、もっていた手紙を見つめ、自分のふところに納め入れ、こう言いました。
「あの、差し出がましいようですが、もし私でよければ、そのお役人に話をして、船長と仲間の方達を解放していただけるようお願いしてみてもいいのですが・・・」
「本当か!!トーマスさん」
その船員はうれしそうに、トーマスさんの肩をつかみ、ゆさぶりながらトーマスさんの目を見すえた。
「あ・・・はい・・・私はこの島に来て、もう二年以上になります。
言葉も少しはわかりますので、この島には城も国王も役人もおります。
この島の情報もいささか知ってはいるので、もしかしたらみなさんの役にたてるのかもと、
思ったものですから・・・」
「頼む!!いや・・・このとおりだトーマスさん、おれ達の船長を助けて
くれ!!! でなきゃおれ達は国へ帰れねぇ・・・」
その船員の言葉に胸がズキンと傷んだトーマスさんでした。
「わかりました・・・私は城に行って、みなさんの船長さんのことを
お話してきましょう」
「ありがとう! ありがとうトーマスさん! オーイみんな、ちょっと来い!
話がある、あつまってくれ!!」
その船員は耳が痛くなる程の大声で仲間達を呼び集め、トーマスさんを紹介しながら「我らが救世主」とたたえ、船員達より熱いエールを送られて、引くに引けなくなってしまったトーマスさんでした。
けれども、「自分の思いを運んでくれる同郷の友への助けとなるのであれば・・・」と
一肌ぬぐことにしました。
船員達と約束をかわし、カマルさんが心配するといけないとトーマスさんは、「酒でも飲んでいけ!!」と
引き止める船員達にあいさつをして、急いで家に戻りました。
そんな出来事が、トーマスさんの身におきていることなど知らず、家でトーマスさんの帰りを待ちながら、夕食の仕度をしていたカマルさんでした・・・そんなカマルさんもまた、何か悩んでいるようすでカマの火を炊きながら、気のぬけたようにハァーと大きなため息をついて考え事をしていました・・・
その日の昼前のことでした。トーマスさんが出掛けた後、自分も仕事に向かおうと、おばの家へ出向く仕度をしている最中に・・・
つづく
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