2007年08月03日
奇妙な世界に踏み込んだ・・・そして今すぐ・・・P8.1
打ち明けて、半ば放心状態の私だった。
ほんの少し間をおいて、主人は私に向って
こう言った。
「じゃ、今すぐ最初の一歩を踏み出せば いいんじゃない?」
「え?」 思いも寄らないというか、何を言っているのか解らないというか、主人のその一言に動揺しながら 「え?今すぐ…って」
「だから、お母さん一人で進めないなら、一緒に進めば出来るんじゃないの?お母さんの話聞いてなんとなくしか解んないんだけど、とりあえずその…おばちゃんが言ってたこと?お宮を廻れって言ってたんでしょ、お母さんはそれをすることで何か答えが出るんじゃないかって思ってるんなら、まずその一歩を今すぐ踏めばいいんじゃない?だから、今すぐ行こ。」

「今すぐ行こう…って、どこに?」
「だから、お宮廻りをしなさいって言われたんでしょ?波之上宮だったら、近いから今すぐ行けるし、」
「え?だってもう日が暮れてるし…子供達だって家…」
「そんな事言ってたら進まないよ、思い立ったが吉日っていうでしょ、ホラ、行こう!」

あっけにとられてボーッとしている私を店からひっぱり出し、「ホイッ」 と
バイクのヘルメットを私の頭にのせ、オートバイのエンジンをかけた。
私はまだ漠然としない意識の中で、今、何が起きているのかさえ理解
できず、ただひたすら主人につかまって風を感じる事しかできないまま、あっという間に波之上宮に着いた。
辺りはもう暗くなっていた、バイクから降りて主人と一緒に波之上宮の本堂へと向かった。

まだ頭の中では何の整理もつかない状態で、一体そこに行って何をどうすればいいのかさえ考える事も出来無いまま、「そういえば、おばさんが言ってたのは、八代龍王とお宮がなんとか…って」 と、ブツブツ思い出しながら本堂に近づき 「おさいせん持ってたかな?」 などとバックをゴソゴソしながら本堂に目を向けた瞬間、口から心臓が出てきそうな程私は驚いた。

まるで待ちかまえていたかの様に、本堂の中央に大きな龍がとぐろをまいて私をじっと見ていた。ルビーの様な真っ赤な目をした龍、「蛟龍王だ…」すぐに解った。
つづく
2007年08月05日
奇妙な世界に踏み込んだ・・・「蛟龍王だ…」・・・P8.2
目の前で私を見ている龍、
仮にも自分のご本尊として絵を
かかげて、旧暦の新月と満月には
風習に習って手を合わせてはいたが…
いろんなものを見てきた私でも、さすがに龍というものを見たのはこれが初めての事だった。大きくその迫力というか威圧感というのか、さながら蛇に睨まれたカエルの如く、頭のてっぺんから氷水をかぶったみたいに全身が硬直状態になった。
身動き一つとれずにいた私を心配して、主人が寄り添った
※イメージ画 「どうした?大丈夫?」
「……とうさん…龍神が…いる……」 「は?」
「今、私の目の前に……蛟龍王がいる……」
この時程、龍神が見えていない主人がうらやましいと思った事はなかった。
正直、龍というのは マンガやテレビ等でしかお目にかかることのできない空想上の生き物だとしか思っていなかった。これまで亡くなった人とか、守護神などとは数えきれない程出会っているが、龍の存在などと、心のどこかでは信じていなかった。
本堂で立たずむ私と主人、私達を見すえて蛟龍王は、こう言った。
「私は、何であろうと古(いにしえ)の約束を果たす…」 「???」
何の事を言っているのか解らず、何を返せばと考えようとしたその時、突然ものすごい勢いで向ってきた。私の身体を通り抜け、一旦 上空へと登り、ゆっくりと又元の本堂内へと戻った。
頭の中は真っ白になっていた。ただ何か大きなものが動き出したという感じだけはあった。何もできず、つっ立ったままふと蛟龍王の前足に何か小さく光るものが見えた、目にした私に気づいたかの様に、「これはお前の魂の1つ、私がいただいた。」 龍神が言った 「な…」
「お前はこれから残り七つの宮を廻り、その度お前の魂は我が同士が預かる、最後の宮に巡り着き、事を終えた暁には、我々はお前の命と共に、その胸の内にある開連を手中に納め、時の宮へと奉納せねばならん、時の修復の為、仕方無きと思え。 さもなくば時が終末を向える事になる。 我々はその為にお前を幼き頃より育ててきたのだ、お前の内に連花が生じる時をどれ程待ち続けてきた事か……その命と引き換えに願いを叶えてやる、想うところを唱えてみよ!」
「な…なんで…」
「お母さん?…何か今…ものすごい・・・何かが通った様な……」
主人でも感じる事の出来るすさまじい龍神の気であった。
「一体…どうなってるの?」
私ですら何がどうなっているのか、すでに頭の中は真っ白で起きている状況を把握しようにも目の前には本尊として来た龍神、その龍神のいった言葉の意味すら理解できない。1つだけわかったのは、今まで一生懸命崇め奉ってきた龍神に「死んでくれ」と言われたことだけだった。

いつもの自分であれば、パニックを起こして騒ぎ立てていたかもしれないが、もうそんな状態も通り過ぎていたので、それどころかむしろ自分の心は水を打った様に静まり返り、何も無い真っ白の空間の向こうに一点の光が見え、それに向って気を集中している自分がいた。
「さあ、何なりと唱えよ」
龍神が私を急ぎ立てた。自分の中に驚く程、冷静な自分がいて、その自分が動き出したという感じだった。手が自然と 「日輪」 の施無畏印(せむいいん)を組んでいた。自分自身に、ある決意が下った。日輪を組み龍神の目を見つめ私は唱えた。
「愛する者達と共に、ここに生きることを示せ」 一瞬、龍神の赤い瞳がカッと見開いた。
「……聞き留めた…」
静かにそう言って、蛟龍王は昇天しながら消えた。
「何か、わかった?」 主人が心配そうに言った。
「ん、よくわかんないけど・・・とりあえずって感じ…帰ろう」
あれ程動揺していたのに、笑顔を見せられる程、落着きを取り戻した自分がいた。
まるで自分の中にある時計が動き出した、そんな感じであった…
つづく
2007年08月09日
奇妙な世界に踏み込んだ・・・「白龍王だ…」・・・P8.3
そして、死への恐怖心に打ち勝つ為に
私は主人と共に、最初の一歩を踏んだ…

蛟龍―絆を結び
波上宮 (那覇市)場所
その踏み出した先で目にしたもの、耳にした言葉は私にとって余りにも信じられない出来事だった。
その日はまるで何も無かったかの様にふるまっていた自分だったが、心の中で 「どーせ見えない世界の事なんて現実を生きている自分には関係のないことなんだから…何か幻想を見たんだって…勝手な妄想をしたんだって思ってりゃいいんじゃない?」
そう思い込むことによって、心を安心させようと務めている自分がいた。
でなければ、今日あった出来事を事実だと認めてしまったら、私は龍神に 「裏切られた」 ことになる、そして今まで自分が 「神信心しなさい」と言われ続けて一生懸命やってきたこと全てが何もかも 「罠」 であったということになる。
そうすると、信じて歩んできた私は大バカ者だということを、認めなければならなくなる。それは、むしろ死よりも恐れていたものかもしれなかった。

「とにかく何であれ、やり始めたことは最後までやり通してみてから考えよう。」 そう決断し、残り後7つのお宮を探して巡ってみようと、主人と相談しながら次々とお宮を巡って行った。
波之上宮の次に行ったのが普天間宮であった。

やはり前の時と同じ様に、そこには白龍王が待ちかまえていた。何も言われない内に、先に私の方から又前と同じくして唱えた 「愛する者達と共に、ここに生きることを願う」 と・・・・・
恐さから先に口火を切った自分だった。又、蛟龍王の時の様な言葉を言われるのが耐えられなかった…… 私の思いに気づいてか、白龍王は何も言わず横目で私を見ながらスーッと後方へまわり、背後から私に向ってきた。
目を閉じていてもはっきり向って来る白龍王を感じ、見えてしまう・・・それなのに、何も出来ずただつっ立って2番目の魂をもっていかれる自分が情けなかった。ふと、くやしく思ったその時から、龍神に対して怒りと憎しみを感じ始めた。



そんな思いを抱いたまま、というより日に日に思いは強くなる一方でそんな時を過ごしながら、2カ月程かけてお宮を巡った。

白龍―その全てを成就する
普天満宮 (宜野湾市)場所
つづく
2007年08月10日
奇妙な世界に踏み込んだ・・・「金龍王だ…」・・・P8.4
そこへは子供達も連れて参拝をした。
金龍―正義を通し
識名宮 (那覇市)場所
深妙な面持ちの私とは逆に子供達はピクニック気分といった感じで、手をあわせる私の側で、同じように手を合わせながら、何度もおじぎをして、 「大っきくなれますよ~に」 と願い事をする我が子のその姿に、何だか励まされたような気持ちになって 「泣き事ばかり言ってたら、親失格だよね。子供達を守る為にも強くならなくっちゃ……」
そう思い、気合いを入れなおしてから手を合わせた時、目の前に金龍王が現れた。私が願いを唱え終わると、私に向かって真っすぐ正面から向かってきた。私も正面から来る金龍王をしっかりと見つめた。
私とすれ違う寸前で何故か金龍王は、その美しいさんご色の瞳をギュッと閉じた。

そして、そのまま私の中から3番目の魂を抜き取った。

事を終えたと思い戻ろうとしたが、金龍王は消えることなく昇天もせずその場に立たずんでいた。
どうしてだろう?と思って金龍王を見つめた。
そして、 「持っていて下さい」 と金龍王が一言いうと、スーッと何か妙なものが私の目の前に近づいてきた。それは両端に鎌のような刃のついた、なぎなたみたいなものであった。何となく形見分けをされた様な気がした。それを受け取り訳を聞こうとしたら、金龍王の方から先にこう言った。
「私は今、忘れていた記憶を取り戻した。あなたの願いを聞き留めた後、龍王としての時を終えてしまっても、今とり戻した記憶を結して失いたくない、絶対に忘れたくないのです。その為にも、これをあなたに持っていてほしいのです。」 ゆっくりと昇天しながら、そう言って金龍王は見えなくなっていった。
龍神達の思いなど全く知らずにいた頃だった。だから、金龍王の言葉の意味をその時の私はまだ理解できなかった。

そのお宮は、小さな子供達が無邪気に遊びまわる
保育園の敷地内にあった。
粋龍―純心を保ち
安里八幡宮 (那覇市)場所
その一角にこじんまりとした社が設けられていて、子供達を見守るかのように八幡の神が祀られている場所であった。そこには水のように透き通った瞳の粋龍王が立ち、前の龍神達と同じように私が願いを唱えた後すぐに、言葉をかわすこともなく私から4番目の魂を抜き取り、あっという間に飛び去って行った。余りにもあっけなく私の魂を持っていった粋龍王に、戯言な態度を感じた。 「何?あれ、なんかムカつく」
などと思いながら、帰り支度をしていると保育園の子供達が私の方に駆け寄り、話しかけてきた。「ねえ、ねえ何ウートートーしてるの?意味ないよ、ウートートーしても神様なんかいないんだから・・・」

まだ幼い子供の口からそういう言葉を聞かされてしまうと、なおさらへこんでしまい 「そうか?」 と聞き返したら 「うん、そうだよ!」 とあっさり
言われて 「もしかしたら、そうなのかも・・・・」 と思った自分がいた。

5番目に、末吉宮に行ったが、
何度呼びかけても龍神が現れることも無く、龍神どころかいつもなら何だかんだと出てくる
ヌール神すら現れることもない、今までに感じたことが無いほどひっそりと静まり返った山合いの広い
公園内にあるお宮だった。
そこは、学問の神様を祀る社で、受験をひかえた学生達が合格祈願に訪れたりする場所でもあり、
遠くに首里城を眺める高台であった。
何だか気が抜けて我に返ると、心地よい風が吹いていることに気がついた。
私は何も無いその状況に、とても久しく安堵を感じた。
いつの間にか忘れかけていた 「安らぎの一時」 というものを思い出した。


末吉宮 (那覇市)場所
つづく
2007年08月11日
奇妙な世界に・・・「福龍王が言った…」・・・P8.5
6番目に自宅から最も近い天久宮に向かった。
泊港の向かい側にある外人墓地から入る道を上がって
いくと左手に小さな「とりい」が見えた。
福龍―冨を得
天久宮 (那覇市)場所
元々この辺りは昔からの漁港で海の玄関口となっていたとされる場所であった為に、このお宮は漁港を営む人々の航海の無事を祈る為に設けられた拝所であった。
昔は海岸沿いであったが今は、埋め立てられて住宅地となっている。けれども、天久宮の 「とりい」 をくぐり階段を降りていくと、神ウコールが置かれている場所があってその辺りには、今でも元は海であったと解るような、さんごが隆起して出来たと思われる岩肌を目にする事ができる ある意味時間の流れを感じさせる場所であった。
そして私は神ウコールを前にして手を合わせたが、何か邪魔が入っているかのように、中々集中することができず、福龍王が立ったことは覚えているが、正直言ってその時あった事を余り覚えていないのである。
確かに?願いを唱えてはいるが言葉に出そうとすると、とたんに自分が何を言おうとしていたのか忘れてしまい 「アレッ?今なんて…… 」 と思い出そうとすると、下の方からどんどん言葉が消されていく様なそんな感じだった。
何度も言葉を言い直し、どうにか事を終えたが実のところ福龍王が私の魂を抜き取ったのかどうかさえも解らない状態で、このままここにいると何もかも忘れてしましそうな、そんな気がして慌ててそこから、逃げ出す様にはなれたのであった。
帰り極に何となく、これが冨を得るとされる福龍王本来の力なのかと考えると少しゾッとした。
そして7番目に行ったのは金武宮で、
そこにいたのは、紫龍王であった。
紫龍―全ての病を治し 金武宮 (金武町)場所
だが私が見るところ、紫龍王の様子が何かおかしく感じられた。
私をさけている様な態度で、紫龍王は聞こえにくい小さな声で私にこう言った。
「私には、できない…… 私にはあなたの魂を奪う事も、龍神としての誓約を果たす事も…… 何も出来ない…… 私はただの臆病者だ…… 」 そう言うと何もせずにフッと消えてしまった。
何かしら紫龍王の中に、迷いと悲しみを感じた。今までの龍神達とは違う、どこかしら人の温かみのような自分と同じように心の揺らぎを持っている者という印象を受けた。



それから、少し時間をおいた。
というのも、代表される八社のお宮として残すのは後、沖ノ宮ただ1社だけだった。しかし、龍神が立たれたお宮はこれまでに6社しかない、残りの沖ノ宮を入れて7社ということは後1社、龍神の立つお宮を探さなければならなかった。
気持ちは焦っていた、相変わらず熱を出してはダウンしてしまう生活を続ける中、どんどん体力は衰える一方で子供達にろくな食事を作ってあげる事も、ままならない状態が日に日に増えてきていた。
7のマブヤー (7つある魂) の内、5つのマブヤーを龍神に抜き取られて 「マブヤーを落とすと身体が弱くなる」 という云われは本当だな・・・と実感した。
鉛のような身体をひきずって生活する中、「龍神の立つ8社を全部廻るまでは、何が何でも歩き続けてやるー」 という精神力だけでうごいていた。そしてある時、ふとこんな言葉が聞こえてきた 「桜、咲き乱れるところ」 その声に耳を傾け、考えた。
そういえば、この時期沖縄では桜の花が開く頃であったのを思い出した。あっちこっちのお宮を廻る際にも、ちらほらと桜が開いているのを目にしていた 「サクラ・・・・」 そうつぶやいて目を閉じ、見えてきたのは思いもよらない意外な場所だった。
つづく
2007年08月12日
奇妙な世界に・・・「黒龍王が言った…」・・・P8.6
次に龍神が立ったのは、
お宮でも神社でも無い美しいヒカンザクラが
咲き並ぶ名護城跡の拝所であった。


海龍―徳望を持ち
名護城跡 (名護市)場所
そこにいたのは海龍王で、私が願いを唱えた後、「お宮とあてて巡礼せよ」 という支持をうけたにもかかわらず、お宮でも神社でもない場所であるという事に対して疑問に思い海龍王に問いかけた。
「何故ここに立たれるのか?」 私の問い対して、海龍王はこう答えた。
「この地こそが、古よりの龍宮神の門なる霊場である。」 私はこれまでに、いろいろな霊場や御獄を巡礼してきたが、確かに実際に設けられている拝所が、本当に昔からその場所にあって、信仰を営んできたかというと、歴史の流れにおいて場所を転々としてきた拝所も、事実少なく無いことをヌール神や他の心霊達との関わりの際に、知らされることも多々あった。
今現在、観光名所としても大々的に名を馳せているような拝所も私から見ると、霊力など全く働いていないカタチだけの場所もあるということも知ってはいた。だから、海龍王の言った言葉に対しては、何ら疑問視する部分は無かった。
私はこの地こそが、徳望を司る海龍王の門であると心に留めた。
帰り際、美しく咲き誇るサクラの木を眺めていて、何となく小枝を手折って持ち帰った。(本当は、してはいけないことです。申し訳ありません)
そうすることで、自分がしっかり立っていられるような気がして 「散ってしまっても、また来年もみんなでこのサクラの花を見る事ができますように・・・」 そんな願掛けのような思いが自分の中にあった・・・・・・
これが8番目の巡礼であった。
そして最後となって向かった先は、
沖ノ宮だった。
黒龍―天災を防ぎ
沖宮 (那覇市)場所
着いてから駐車場に入るまでもなく、もうすでに宮の上空に大きくどす黒い龍神の中では最も長老といわれる黒龍王が待ちかまえていた。
一瞬心がひるんだ… 全身に鳥肌が立ち、今すぐにでも逃げ帰りたい気持ちを必死にこらえて前に進んだ。本堂に近づけば近づく程何か身につまされるものがあった。
恐いというよりも悲しみを感じとっていた。本堂に着いて8回目の願いを唱えたが黒龍王は、私の魂を奪わずして深くしんとうする様な声で 「聞き留めた…」 といった。
そしてスッと私の前にオ二キスの様な丸い玉を1つ置いた。
そして黒龍王が続けて言った。
「この宝玉は破壊と崩壊の力をもつ玉、お前なら呪われし力も正しく使うことが出来るであろう。それを手に受け、私が唱える言葉を用いてこの呪われた姿を終わらせてくれ……元来、 龍とは誓約を果たす為に己自身にかけた呪縛の姿である。
その約束が果たされぬ内は元の姿に戻れる事は無く、我々は龍神として長き時を経て来た…ようやくその呪縛の時に終止を迎えられる機会が来たという事だ…… 我々はお前を憎んでなどおらん、ただ機会をもたらしてくれる者を待ち望んでいただけだ…… 私が教えた言葉をお前自身の力をもって唱えよ……
案ずるな、我々にとって終わりとは死では無い…… 新たなる変化だ、時を終わらせるだけで、存在が消えるわけでは無い……」 


黒龍王の言葉を聞いて、何故か私はひどく心細くなった。まるで子供の頃に親とはぐれて迷い子になった時の様な気分だった。
「………………」 言葉が出なくなり、しばらくだまっていた
すると、大きな声で黒龍王が怒鳴った。![]()
つづく
2007年08月13日
奇妙な世界に・・・「今頃になってそんな…」・・・P8.7
「我々の目的はお前の命を
奪う事には無い!」
「魂を奪われる事に妥協も無く我々の力にひれ伏す事も無く、
生きる姿勢を貫いたお前のその様に紫龍王は共鳴を受け、魂を奪わずしてお前の内に残した。
八ノ宮を巡り、全ての魂を奪われる事無く一つでも残す事が出来、命を留めたお前に我々が屈服したのだ… だからこそお前に、我々の意志をゆだねているのだ…これでようやく誓約を果たし終える事が出来る。
龍神としての記憶は全て失うことになるが、意志を委ねられたお前はこれより先、全ての記憶が甦る・…… 心しておくがよい…… さあ、早く終わらせてくれ…… 私はもう、疲れた…………」
私はひどく悲しかった。

「今頃になってそんな話をされても… 何で最初で言ってくれなかったのか…」
「別に試す様な真似をしなくても他にも方法があったんじゃないのか……」
「ホントは裏切られたと思って……」

言いたい事、聞きたい事山ほどあるのに、今、目の前に突きつけられているのは 「別れ」 だけ… 前も後もない状態で自分がすべき事は、さよならをすることだけで…… それしか残されていなかった。
「無理だよ… そんな事できない…」 私がそう口ばしると 「何が?」 と主人がきいた。私はしどろもどろに、起きている事を説明した。
私の甘えかもしれなかったが、その時 「一人では出来なくても・・・一緒ならできる。」 そう思った。龍神の頼みを共に叶えてほしいと、主人にお願いした。私の手に主人の手を添えてもらい、一緒に呪文を唱えてもらった。
黒龍王の姿は静かに、ガラスがくだかれて散っていく様にバラバラになって消えていった・・・

これで私は八代龍王をあて八つのお宮を巡礼するという役目を終わらせた。
黒龍王がくれた黒い宝玉を自分の真ん中にある魂の中に納めた。
私が敬愛してきた龍神達は 「終わらす者」 を求めていた。そして、ずっと側にいて守ってくれると思っていた龍神達に、私は自らの手で別れを下した。
「行こうか…」 と主人が私の手をとり本堂を出ようとした時、身体中がガタガタと震え出し自分をコントロールする事が出来無くなってその場で泣きくずれてしまった。

しばらくの間、主人は私の肩を抱いてだまって寄り添ってくれた。
私は心から主人に感謝した。この時、ずっと温かい手がすぐ側で私を支え続けていてくれたからこそ、自分を失わずにすんだのだと思う。もし、誰からも理解されず目に見えない世界で自分と戦い続けて
たった一人でつき進んでいたとしたら、命は残せたとしても黒い宝玉を手にした瞬間で、私の精神は、最後に見た黒龍王の姿のように崩壊してしまっていただろうと、今でも思っている・・・・・

蛟龍王 白龍王 金龍王 粋龍王
福龍王 紫龍王 海龍王 黒龍王
沖宮 (那覇市)場所
波上宮 (那覇市)場所
識名宮 (那覇市)場所
天久宮 (那覇市)場所
安里八幡宮 (那覇市)場所
末吉宮 (那覇市)場所
普天満宮 (宜野湾市)場所
金武宮 (金武町)場所
名護城跡 (名護市)場所
八社を廻り終え、家に戻って火の神 (ヒノカン) に手を合わせ
報告をした。本当なら、最後まで事を成し遂げたと
胸を張って報告をするはずだった・・・でも、
何かやりきれない思いの方が強くて、そのせいか火の神からは
何の応答も無く、そのまま龍神の絵の前に立って、
しばらくの間 目にするのを避けていた龍王達の姿を
眺めていたその時だった・・・自分自身にとてつもない大きな変化が起きていた・・・・・・・
2000年2月の頃だった・・・・・
つづく










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